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研究内容紹介

研究領域:核医学


核医学は,放射性核種で標識した医薬品を投与し,その生体内での挙動を追跡することによって,生体内で起こる生理的,生化学的および薬理的な反応の変化を捉え,それを解析することにより病態の解明を図り,診断するところに大きな特徴を持つ,と同時に治療(内用療法)も行う領域である。一方,体内情報を画像化・視覚化するためには,撮像装置(SPECT, PET)の構造・性能,撮像技術,画像処理・解析法の理論が重要であり,まずはこれらを理解し,基礎および臨床研究をとりまとめる能力を身につける,さらに先端技術の新たな理論の構造ならびに医療応用の研究の取り組みを達成する。


研究テーマの一部を以下に紹介する。

 

  • ファントム実験および臨床応用による画像処理・解析学
    1. 心電図同期心筋SPECTによる心機能解析法(Functional G-maps)の開発
    2. タリウム・ガリウム発生光子の異なった吸収差を利用したSPECTの減弱補正と散乱補正法の開発
    3. 画像標準化を目的とした心筋ファントムおよび画像解析評価プログラムの構築
    4. SPECT/CT装置のX線CT法に基づく線減弱係数およびSPECT画像の各種補正効果の評価と応用
    5. 骨シンチグラフィーの定量化に関する研究
  • 小動物モデルによる基礎実験
    1. 動物モデルを用いた99mTc-MIBI または 99mTc-tetrofosminによる臓器血流の定量化に関する研究
    2. パーキンソン病小動物実験モデルを用いた131I-MIBGと201TlClの体内動態 -診断指標および集積低下機序の検証-
  • 心電図同期心筋SPECTによる
    心機能解析法(Functional G-maps)の開発

    心電図同期心筋SPECTを用いて,心筋血流および心機能を視覚的に同時評価できる解析法を考案した。収縮末期カウント(Max),拡張末期カウント (Min),カウント増加率(%CI),摂取率(Uptake)など,従来の評価法の他に,新たに最大収縮速度(PCR),最大拡張速度(PDR),駆出時間(CT)の指標値を解析,評価した。今回新しく開発した解析法は心筋血流の評価と同時に各種心機能指標を容易に視覚化でき,正常例および心疾患例(供覧:非対称性中隔肥大型心筋症)の結果から臨床応用に有用であると考える。

     

    画像標準化を目的とした心筋ファントムおよび
    画像解析評価プログラムの構築

    核医学領域における心筋SPECT(Single photon emission CT)画像は,心筋梗塞等の虚血性心疾患の診断に重要な位置を占め,特に心筋生存能力(viability)の評価には不可欠な存在になっている。しかし,核医学画像はCTやMRIと異なり,画像を構築する技師(技術者)や医師の施設間差が大きく,施設間で診断が異なる場合も存在することから,心筋SPECT専用の画像精度管理画像標準化を目的としたファントムおよび解析評価ツールの必要性が求められている。今回,開発したシステムの大きな特徴は心筋病変部の広さと深さを簡便に同時評価できる心筋ファントムの構築と画像の自動解析評価ツールの構築の2点であり,実用化に向けて必要なファントム作成技術および撮像システムの研究開発を行っている。

     

    正常ラットを用いた99mTc-MIBIによる臓器血流の体内動態
    -食事摂取の関係-

    心筋血流イメージングは食事の影響が問題となっているが,食事摂取と各臓器摂取率の関係を詳細に検討した報告はない。ここでは99mTc-MIBIによる動物実験モデルを用い,食事摂取の有無を比較,検討した。心臓摂取率は両者に有意差はないが,Meal(+)の方が約20%高値を示した。一方,肝臓摂取率はMeal(+)の方が低値であった。腸管摂取率および腸管内容物と腸管壁の放射能含有率は両者間で有意な差は認められないが,Meal(+)で腸管内容物の移行が速い傾向を示した。画像処理・解析において,心臓/肝臓比は高く,検査時間での肝臓・腸管への集積が少ないことが望ましいが,動物実験モデルの結果から,検査前に絶食した方が心臓の画質が向上するという可能性が示唆された。今回,安静時の正常ラットによる実験結果であり,実証に至るには心疾患モデルなど更なる検討が必要である。